私(ガザール)は実家のダマスカスに居た頃、日本の大使館や日本の企業などのコーディネートの仕事に就いていましたが、たくさんの事が学べる良い機会となりました。
もともとシリアと日本の市民レベルで交流のかけ橋になるような仕事をしたかったので、直接日本の方々と触れ合える仕事がしたいと考えていました。
また日本に住んでいた頃、シリアに関わる日本人学生やNGOの活動家からアレッポの石鹸は日本人に評判がいいと聞き、特産品の少ないシリアにとってアレッポの石鹸が受け入れられている事はシリアの文化にも興味を持ってもらうチャンスではと考え、市民レベルでの交流につながると思いアレッポの石鹸を日本で販売する事から始めてみようと考えました。

1997年、取引先を決めるためスーク(市場)に売られているアレッポ石鹸を買い、品質の良い工場を選んでいきました。
幾つかのアレッポの石鹸工場に連絡を取り工場を見せてもらい、バラカート社に決めました。
また、地中海に程近いカサブにはカサブ石鹸のスティーブ工場があり、この2社と契約しました。
下記はその時の写真(カメラが古くてすみません)左 ヤヒア・バラカート 中央 当社のガザール代表 右 ワリード・バラカート

アレッポの石鹸職人から


2000年、会社を札幌市に設立。自分の足で販売先を探して回り販路を地道に広げていきました。
2年後には少しずつ軌道に乗り始め、2002年に赤坂で行われたJETRO主催のシリア・ヨルダンの展示会への出店にお声掛け頂き、「アレッポの石鹸」と「カサブ石鹸」をシリアの特産品として紹介するという貴重な体験をしました。
下記はその時の写真(カメラが古くてすみません)

アレッポの石鹸職人からジェトロ

また、同年にデパートや薬局、自然食品店の販売先が大きく増えたことから関東進出のため会社を千葉県に移転。

その後はアースガーデンやエコプロダクツ等のイベントへの参加。
下記の写真は2004エコプロダクツの時の写真。

アレッポの石鹸エコープロダクト

時には取材を受ける事もあり、少しずつではありましたが成長していきました。
下記は取材を受けた記事です。

アレッポの石鹸日経新聞

2014年から当社と取引先のバラカート社、スティーブ氏にとって困難と激動の時期です。
アレッポ市が激しい攻撃をされ、多くの一般市民は犠牲となり、または難民となりアレッポから避難する市民達が増加していきました。日本でも毎日のようにアレッポの惨状が報道されるようになっていました。
現地との連絡が途絶えがちになり、石鹸の生産が出来なくなるのではないかとの心配から、バラカート社にできるだけの量の石鹸を作って欲しいと依頼、2015年には大量の石鹸を日本に輸入しました。その直後、石鹸工場近くにタル弾が落とされ工場に被害が出ました。この時すでにスティーブ氏は石鹸の製造を止め家族と共にアメリカに向け出国、避難。これを機にカサブ石鹸は千葉県の当社にて製造する事となりました。
そして、バラカート社の皆さんはアレッポの石鹸職人と一緒にトルコに避難し、難民となりました。
難民となったバラカートさんは家族が一緒に住める民家を借り、トルコでの生活を始めました。
アレッポでの惨状により希望を持てず石鹸の生産はもはや出来ない状態でした。
何か月も連絡が取れずにいたので連絡がきたときは安堵しました。そして日本のお客さんが石鹸を欲しがっている、この石鹸が無くなると困る人がたくさんいる、私もサポートするので頑張ってくれないかと伝えました。
日本では、激しいアレッポへの攻撃による惨状が毎日のように報道され、アレッポを心配する声や石鹸が日本から無くなるのではという声が聞かれるようになっていました。
そんな中、当社もNHK総合とBSから取材を受けました。
下記は報道された時の写真

NHK2アレッポの石鹸

NHK1アレッポの石鹸

NHK BS 2016年に世界のトップニュースの取材を受けた時の写真。

アレッポの石鹸PS1

アレッポの石鹸PS1


アレッポの石鹸NHKPS1

アレッポ情勢が報道されることにより、リピーターのお客様だけでなく石鹸の事を知らなかった方々までもがアレッポの石鹸を買い求めるようになり、当社の1年分の在庫が約2週間で無くなる勢いでした。
しかし、バラカートさんがトルコに避難する前にありったけの石鹸を日本に出荷してくれた事が功を奏しました。
トルコに避難したバラカートさんは1年がかりで見つけた石鹸の廃工場を借り、試作品作りを始めたとの知らせは、石鹸がまた日本に入ってくるという喜びもありましたが、彼らが希望を持って前向きに動き出した事が家族の心配や悩みを持っていた私自身が勇気を貰いました。
石鹸の在庫はギリギリの状況でしたがトルコで製造したアレッポの石鹸第1号が何とか日本に届き、当社は欠品という事態を回避できました。

アレッポで生産していれば掛からなかった経費がこのような事態になった事でずいぶんと掛かりました。
トルコはアレッポよりも物価が高いうえに賃貸の工場では何をするにもトルコ語の通訳が必要なのでバラカートさんのストレスは計り知れません。
当社が出来る事はこの負担を当社が負う事で何とか石鹸を作り続けられるよう、またより多くの日本の皆さんに難民となってアレッポの石鹸を作り続けている職人達の事を知ってもらうためのサポートを続ける事でした。
そのためにも、品質を落とさない事、値上げをしない事、ネットでの販売に力を入れ幅広く認知してもらう努力を職人たち側と日本の当社側で行ってきました。

前にも書きましたが、私はシリアと日本の市民レベルで交流のかけ橋なるような仕事をしたいと思っています。
石鹸を売る事で単にモノとお金のやり取りだけではなく、シリアの石鹸職人の思いや今置かれている状況も伝えたい。また、日本で石鹸を使ってくれている皆さんの思いも石鹸職人に伝える事が出来ている事を嬉しく思います。

時折、心ないコメントを見つける度に悲しくなる事もあります。ですが、日本から遠く離れ今も困難に立ち向かっている難民達を思うと小さな悩みに過ぎません。これからもあきらめずに頑張ろうと思っています。
何よりアレッポの石鹸職人たちに感謝の気持ちでいっぱいです。そしてバラカートさんの商品を認めて下さった日本のお客様にも心より感謝しています。

有限会社クロスロードトレーディング
代表取締役 ガザール 勇

アレッポの石鹸Paris2

アレッポの石鹸Paris1

●うれしい発見●

先日、ガジアンテップの石鹸工場を訪問しました。
途中、イスタンブールとパリに立ち寄りました。
お土産屋さんやコスメショップにいつも立ち寄るのですが、その時アレッポの石鹸が売られていました。
アラビア語のスタンプはそれぞれの工場の刻印で、難民や移民となったアレッポの石鹸職人が今生きている国で頑張っているんだなと伝わってきます。
希望を言えば故郷のアレッポに戻って昔のように石鹸作りをしたいと職人達は思っています。
その平和が戻るまでは異国で頑張って石鹸作りを続けて欲しいと願います。

アレッポの石鹸トルコ

アレッポの石鹸トルコ2

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トルコでのアレッポの石鹸職人の労働条件

アレッポから避難し、2015年よりバラカート社はトルコでの製造を本格化しました。
その時はトルコ語が話せる通訳を雇い、工場設立に伴う許可申請など簡単なことではありませんでした。
シリアに比べ物価が高く工場設立の経費も大きな負担でした。
しかし、石鹸作りを再開したいという強い思いで、トルコでの複雑で諸手続きは大変ではありましたが、「きちんと努力すれば正当な結果が得られることが嬉しかった」とバラカート社代表は話します。
以前はビジネスに必要なあらゆる手続きには独特な経費(コネ等)が必要でした。  この経費が高く大きな負担でした。
しかし、トルコでは事務的な手数料には明細があり、多くの民主的な国であれば当然なことです。
理不尽な理由から受付けないということもありません。

トルコでは難民であったとしてもトルコ市民とほぼ同等な権利を与えてくれています。
また、EUを手本とし、労働者の権利や雇用側の義務を課されてもいます。
中でも労働者に対する社会保険の加入の義務はシリア人にとっては驚きです。
初めて触れる民主的な国での義務と権利にはお金が掛かりますが、広く平等に扱われることを納得し受け入れて操業しています。

以前に比べ嬉しいのは労働者に良い賃金を支払えること、自分達にとっても有意義にその収入を使えること、そして難民キャンプにいるシリア人のために自分達の働いたお金を寄付できることに何より誇りが持てると話します。

特定の者だけが得をするような不平等を長い間見せられてきた職人達は、このような当たり前のことでも自由で幸せなことだと感じています。

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夏野菜が店頭に出始めると、どの家庭でも作られている家庭料理のひとつにマヒシがあります。

ズッキーニや茄子、ピーマンなどの野菜の中をくり抜いて、そこに羊の粗ミンチ肉と米に味を付け詰めてトマトソースで煮込む料理です。

子供は日本の茄子程の大きさのズッキーニのマヒシ(クーサマヒシ)を好んで食べます。

5人家族だと1人約5本は食べる計算で25~30本のクーサ(ズッキーニ)の中をくり抜くので慣れるまでは時間もかかるし、くり抜く器具が突き抜けて穴が開くなどの失敗も多い作業です。

ベテラン主婦になるとドラマを見ながらチャチャットこなしています。

しかし、残念なことに日本で出回っているズッキーニは細長いものばかりで中身をくりぬく作業が非常に困難。そのため我が家では茄子とパプリカでマヒシを作ってみました。

茄子はよく使っていましたが、パプリカは今回が初めて。作ってみてわかったことは、肉厚なパプリカはしっかりトマトソースに浸かるようにすること。そしてびっくりなのがパプリカの出汁?がトマトソースと混ざり合うことで新しい味わいになったことです。

日本の生活でシリアの食生活を再現することは難しいところがたくさんありますが、今回のパプリカマヒシはちょっと不自由な中での新たな発見でした。 大変おいしく頂きました。

シリアへの支援

当社が行っているシリア難民支援は内戦が激化した頃より行ってきました。 

当社とバラカート社の共同で在トルコのNPOを通してトルコのシリア難民キャンプへの寄付を行っています。 

この難民キャンプの避難民の数は非常に多く、内戦で親を亡くした孤児たちも存在します。そういった一番立場の弱い人たちを中心にNPOは支援活動を行っています。 

また、シリア国内やシリア周辺の国々に避難しているシリア難民キャンプを支援する日本の団体への寄付を行っています。これら団体はシリア難民の現状を日本の皆さんに伝える活動も行っています。そのような団体に物販用の石鹸を無償で提供し、その販売利益が支援金となっています。 

協力させて頂いている支援団体は下記のとおりです。 

イベントなどでお見かけになりましたらお立ち寄り頂けたらと思います。 

・特定非営利活動法人(認定NPO)パレスチナ子どものキャンペーン(CCP Japan) 

・非営利団体Syrian Hands(シリアンハンド) 

・非営利団体Stand with Syria Japan(スタンド ウィズ シリア ジャパン) 

これらの団体の活動にお邪魔した際にこのような質問がありました。 

「シリアに直接お金を送るのですか?」 

とてもシンプルで的を得た疑問だと思いました。 

「現在シリアに直接送金することが困難なためトルコで必要な医薬品や食料、燃料などを買い付けてからシリア国内の難民キャンプに届けています。」と団体の方が答えていました。 

送金が困難という理由の他、そのキャンプでは現金があったとして も基本物資が底をついているのです。 

現地で活動する団体スタッフは危険を伴いながらも立場の弱い人々に寄り添って活動しています。 

日本からできる支援には限りがあり微力ではありますが今後も支援を続けていきます。

アレッポの石鹸ベストセラー

現在、大手通販サイトで当社の石鹸がベストセラーに選ばれております。

多くの皆様に当社の石鹸を手に取って頂きまた高い評価、口コミを頂いておりますこと、心よりお礼申し上げます。

危険から逃れるべくトルコに避難せざるを得なくなったアレッポの石鹸職人達の現状を広く知って頂くため、中間業者を通さず直販によりリーズナブルな価格で販売し続け、一度お使い頂けたら必ずこの石鹸が良い品質の石鹸だと理解が得られると信じてお届けしてきました。

私共の思いが多くの皆様にご理解頂けていることに喜びとお客様への感謝の気持ちを以前よりお伝えしなければと思っておりました。

本当にありがとうございました。

しかし、その反面残念な声も最近では目にすることもあります。

当社の石鹸が他社の真似をしているとか偽物だとかという心無いコメントなどです。

元々、石鹸の産地アレッポにはシリア政府から認定された約200軒以上の石鹸工場がありました。もし1軒だけの石鹸工場だけだったとしたらアレッポが石鹸の産地として世界に知られていたでしょうか。昔から多くの石鹸工場の職人たちがアレッポで石鹸作りをし続けた歴史が石鹸の産地として世界に知らしめてきたのです。

すべてのアレッポの石鹸職人達はアレッポで石鹸作りをし続けたかったのです。シリア内戦の影響で国内外アレッポから避難せざるを得なかった状況でした。 それをどこが本物でどこが偽物などという表現で他社の石鹸を貶めることはアレッポ以外で操業している石鹸職人達の侮辱とも取れる話です。そもそも現在アレッポで操業している石鹸工場もないと聞いています。

当社が販売するバラカート社の石鹸工場もかつてはアレッポで操業し海外に多くのアレッポ石鹸を輸出していた大手工場でした。

どの石鹸工場もずっとアレッポで石鹸を作っていたかったはずです。

ある1軒の石鹸工場だけが本物を作っているというのは、他の多くのアレッポの石鹸職人や石鹸工場の存在を否定することで、これこそがフェイクニュースではないでしょうか。

日本のメディアが昨年11月に取材したシリアレポートです。

シリアの石鹸工場の現状も伝えています。

(記事をリンク http://www.news24.jp/articles/2018/11/16/10409359.html  )

当社が販売するバラカート社は5年前よりトルコで難民となりました。

現在はきれいに整備された石鹸工場で品質の良い石鹸を製造しています。

彼らの努力に私たちはとても感謝しております。

シリアの料理

今年の夏は猛暑の中、会社の引越しに追われ一息つく間もなく、少し落ち着いてきたので久しぶりにシリアのレストランに行くことができました。

このレストランが気に入っているのは、ランチメニューの中には焼き立てのホブズ(中近東の主食でナンの同類)が食べ放題のところ。※写真:風船のように膨らんでいるのがホブズです。

シリアに行ったことがある方でしたらご存知の方も多いのでは。

現地のレストランであっても必ず焼き立てを出しているわけではありません。

ですから、日本で焼き立てを食べられることは現地の人間にとって本当にありがたい。

焼き立ては丸く膨らみ小麦のいい香りがして食欲が増してきます。

シリアのホブズはシンプルな味わいでどのシリア料理にも合い、おいしさを引き立ててくれます。

ホブズの事ばかり話しましたが、このお店は近くに各国の大使館が多く点在し、パーティー用の大皿料理も注文を受け付けているようで、以前は羊の丸焼きが目の前を通過するなど日本では珍しい料理も度々見られます。

とは言え、ランチメニューはお手頃でホブズ食べ放題のセットもあり、コーヒー、デザート付です。

どの料理も気取らない素朴なシリアの家庭料理が味わうことができます。

機会があれば是非一度、焼き立てホブズとシリア料理を食べて頂きたいです。

アラビアレストラン ゼノビア

http://www.zenobia-ib.com/

シリアのお菓子

先々週、断食月のラマダンが明け、新年を迎えた様に「皆さんが健康でありますように」と言って家族や知人に挨拶をします。

そんな折、私の元に知人から大量のデーツ(ナツメヤシの実)が12kgも届きました。

中近東ではラマダン中やラマダン明けによくデーツを食べます。

栄養価が高くミネラルが豊富等、健康に良く中東の代表的な木の実です。

この時期のギフトとして贈られることの多い食品です。

届けられたデーツを当社スタッフに個装パック1kgを配りました。

1kgと言えばアレッポ石鹸5個分相当の大きさなのでスタッフは少し驚いていました。

日本の皆さんは甘さ控えめでなければ食べないから口に合うかちょっと心配でしたが、すっきりとしつこくない甘さが意外に好評でさらに1kgリピートしてくれました。

そのままのデーツも美味しいのですが、デーツを使った中近東伝統のお菓子もこの時期どの家庭でも食べられています。

ちょっと紹介させて下さい。

中近東の伝統的なお菓子、「アジュワ」。

クッキーの中にデーツをつぶした餡が入ったお菓子で、ラマダン明けに親戚や知人の家に行くと必ず出されます。

木型で色々な形をかたどり、この時期は家庭でもよく手作りされています。

日本の我が家には型がなかったのでシンプルに丸い形で焼き上げました。

飾り気のない素朴な味でしたが、嬉しいことに大好評でした。

故郷のお菓子を家族や知人がおいしそうに食べているのを見ていると「皆さんが健康でありますように」と、自然とそんな気持ちになるものです。
母国の情勢は一見静かな状況に見えますが、土地を追われた人々は安心して戻れる保証など全くないため、母国で平和に暮らすという夢をいったんは捨てざるを得ません。

トルコに避難した石鹸職人達も今は母国に戻るという思いを今は封印しトルコで生きていく決意です。

アレッポの石鹸乾燥

トルコに避難し4回目のクッキングシーズンとなりました。
今シーズンの原料の買い付け、クッキングも順調に進み、予定では来年秋以降に日本へ輸出されます。

アレッポとウクライナ情勢

11/11のニュースで、ドイツ・ベルリンのブランデンブルグ門前に、大型バス3台が地面に突き刺さったようなモニュメントが展示されているという記事を見ました。