
石鹸を意味する「サボーン(savon)」という言葉。
実は、この言葉には古代から続く壮大な歴史と、文化交流のストーリーが隠されています。
「サボーン(savon)」はフランス語で「石鹸」という意味です。
石鹸そのものがフランスで有名になった背景もありますが、実はこの言葉自体、さらに古い起源を持っています。
そのルーツを辿ると、ラテン語の「sapo(サポ)」という言葉に行きつきます。
「sapo」は、動物の脂肪と灰を混ぜたものを指し、古代ローマ時代には身体や髪を洗うために使われていました。
しかし、この「sapo」もまた、さらに遠く、アラブ世界からの影響を受けて生まれたものだと考えられています。
アラビア語で石鹸は「صابون(サーブーン / ṣābūn)」と言います。
イスラム教の義務である礼拝の際に身体を清める必要があるため、清潔を保つための道具──特に石鹸は非常に重要なアイテムとして、イスラム社会で発展していきました。
そしてこの「サーブーン」が、中世にイスラム帝国の拡大とともにヨーロッパに伝わり、各地の言語に取り込まれていったのです。
ラテン語 → sapo
フランス語 → savon(サボーン)
スペイン語 → jabón(ハボン)
イタリア語 → sapone(サポーネ)
このように、アラビア語「サーブーン」は、ヨーロッパ各地で石鹸を表す言葉の元になりました。
石鹸一つをとっても、その背後には深い歴史と、人類の交流の軌跡が刻まれているのが素敵ですね。