新しいシリアに変わり、日本での仕事の合間を見ながらやっと帰省が実現しました。 

自分の生まれ育った国でありながらまるで初めて訪問するような錯覚を感じながらの滞在でした。 

日々の生活の中でさまざまなインフラの実情に触れる機会があり、今回はその中でも特に印象的だった点をお伝えしたいと思います。  

まず驚いたのが、道路の状態です。首都ダマスカスでさえ、舗装が剥がれてぼこぼこの道路が多く、走行中は常に車の振動を感じました。信号もほとんど機能しておらず、交通整理を行う警察官もわずかしか見かけません。そのため、運転にはかなりの注意と覚悟が必要です。これほどの状態が「首都」であるということに、アサド政権下でのインフラ整備の怠りを感じざるを得ませんでした。   

加えて停電は日常的に起こります。突然すべての電気が落ちるのは最初こそ驚きました。電気が来たとなればいろいろな電化製品の充電を始め、その中でも重要なのが夜に備えてLEDライトの充電をします。1時間後にはまた停電してしまうのでバタバタと忙しいひと時です。電気のタイムリミットが約1時間でその後6時間の停電を繰り返す感じです。次第に「またか」と思うようにさえなります。 

洗濯機を回したところで完了しないこともあるので、結局洗濯は手洗いになります。 

Wi-Fi環境はまだまだ不十分で短い動画の再生であれば問題ないのですが長いものは難しいですね。 

街を歩いていても、新しい物を見かけることはほとんどなく、特に車は中古車ばかりで、道端で故障している場面によく出くわしました。   

それでも希望の兆しもありました。特に印象的だったのは、プロパンガスの供給が改善されていた点です。アサド政権下では、ガスの入手は極めて困難だったそうですが、現在では比較的安定して手に入れることができます。ただし、日本のように業者が設置に来てくれるわけではなく、自ら車でプロパンガスのボンベを持参し、自宅まで運んで設置するというスタイルです。慣れない私は、その重労働に心身ともに疲れ果てました。日本のサービスのありがたみを痛感した瞬間でもあります。  

また、帰国時にもひと悶着ありました。6月16日にトルコ経由で日本に帰国する予定だったのですが、イランとイスラエルの間で起きた戦闘の影響で、ダマスカス発のトルコ航空便がすべて運航見合わせになってしまったのです。急きょバスでアレッポまで移動し、そこからシリア航空を利用してトルコに渡るという変更を余儀なくされました。  

こうした不便さや困難さに直面しながらも、現地の人々は前を向いて生きていました。政権が変わったとはいえ、まだインフラ整備の道のりは長いですが、人々は新しい未来に希望を託しながら日常をたくましく生きています。そんな姿に、私は深い感銘を受け、逆に力をもらいました。  

今後も何回かに分けて、シリアでの生活の様子をこのブログでご紹介していきたいと思います。よろしければ、次回以降もお付き合いください。