アレッポの石鹸の産地

アレポの石鹼職人から乾燥03
アレッポの石鹸の原料について
アレッポの石鹸の成分は主にオリーブオイルとローレル(月桂樹)オイルです。

オリーブオイル
アレッポタイプの石鹸に使われているオリーブオイルは種まで搾ったオイルです。
そのオイルは緑色で石ケン化しやすく、ビタミンやスクワレンを多く含んでおり、
実と種の成分をより含んでいる為、石鹸の原料としてとても向いているのです。

肌に良いとされる成分として挙げられる代表的なもので、保湿をあたえるグリセリン、スクワレン、
活性化を助けるビタミンA、ビタミンEなどがありますが、これらの成分がオリーブオイルには含まれており、
洗った後のお肌にしっとり感をもたらしてくれるのです。
ローレル(月桂樹)オイル
ローレル(月桂樹)もまた地中海を代表する植物。
生産地域はローレルが広く自然自生していたトルコやシリアなどの地域で、
現在多くのローレルオイルを生産しているのはトルコと言われています。

ローレルの実からとれる暗緑色のローレルオイルは、肌にも良く香りも良い為、
この地域の石鹸の原料として用いられるようになり、その原点は昔の人々のアイデアからでした。

ローレルの葉はその特有な芳香成分から食材の臭み消しや料理の風味づけに用いられ、
ローレルの実から採れるオイルは、皮膚病の薬や芳香剤として使われ、
大量に生産できないため限定的に大切に使われてきました。
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釜焚き製法
石鹸の発祥地であったアレッポは、アレッポの石鹸の産地としても知られるようになったことで大量に生産することが必要となります。
それを可能にしたのが釜焚き製法でした。
釜焚き製法は、原料のオイルとアルカリを一つの鍋に大量に入れ、鍋の下から加熱し原料をじっくりかき混ぜ、
その後大きな型に流し込んで石鹸を作る製法です。
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アレッポ石鹸の見分け方
アレッポの石鹸の市場
アレッポの石鹸の見た目は茶色で四角い形をしていて、一見どれも同じ石鹸に見えます。 それがアレッポの石鹸の一番の個性でもあります。
アレッポには多くの石鹸工場があり、どの工場で作られた石鹸であるかを判別するため石鹸には必ず刻印が押されています。

包装や容器が現在のように豊富になかった時代から刻印を押すことが義務付けられ、そして工場主達は代々その刻印を引き継いできました。

シリアのアレッポでは様々なメーカーのアレッポ石鹸が店先に並べられ、売られています。 どの店も半分にカットされた各メーカーの石鹸が見本として置かれ、お客さん自身が香りと乾燥具合を確かめてから購入するというスタイルが一般的となっています。

アレッポの石鹸の産地

from Aleppo To Turkey
アレッポの危機によりトルコに避難
2011年にシリア紛争となり多くのアレッポの石けんの工場が破壊され、大半のメーカーは生産をやめた中で、
一部は国内の安全な海岸の近くを生産地とし、残りのメーカーは難民の道を選びました。

現在、当社が販売するアレッポの石鹸工場はトルコ南東部に位置するガジアンテップ町にあります。
オリーブの産地であったことから昔から石鹸工場もたくさん点在し、現在も手作り石鹸がどのお土産屋さんで売られています。
また、この町の近くの村々には自生するローレルの群落があちこちにあり、ローレルオイルを生産する農家がたくさんあります。

ガジアンテップは石鹸作りに必要な条件が揃ったアレッポの石鹸職人にとってはベストな土地でした。
熟練した石鹸職人の技術と良質な原料、伝統的な釜焚き製法によってオリーブとローレルの石鹸は作られています。

アレッポの石鹸職人達はどこ
アレッポの石鹼職人の工場
この頃、多くのアレッポ市民は国内に留まるか国外に避難するかの二つの選択を迫られ、アレッポの石鹸職人達もやむを得ずアレッポから避難しました。

国外に避難することで弾圧から逃れる者、国内の安全な海岸近くに移転する者等に分かれました。
国外に避難する際は、飛行機を利用できる訳ではなく殆どの人々が車を使い、車を持たない人は徒歩で国境を超えました。
小さな子供やお年寄りが同伴する家族は、一番近いトルコに避難したケースが多かったようです。
当社の石鹸を製造するバラカート社の人々もトルコを選びましたが、ヨーロッパに渡った石鹸職人もいました。
アレッポの石鹼職人の工場01
トルコでの避難生活が始まると、たくさんのアレッポの石鹸職人達がトルコに避難していることを知りました。
バラカート社を始め、どの石鹸職人も家族を支えなければなりません。
自分達に出来るのはシリア伝統のアレッポの石鹸を作り続ける事と立ち上がり、自力で石鹸工場を設立。
トルコには石鹸作りに必要な原料があり、気候もアレッポと殆ど違いがなく石鹸作りに適していたことは幸運でした。

現在では、アレッポの石鹸職人の工場はガジアンテップに6軒程あります。
バラカート社同様、自力で工場を再開させています。

バラカート社ナデル代表より
アレッポの石鹼職人の工場02
故郷のアレッポから避難し5年。
当時は、家族と共に安全な場所に逃げることだけを考え、身一つの状態でトルコに避難しました。
家族と共に生き長らえ、こうして石鹸を作ることができることは本当に幸運なことです。
これはトルコの皆さんの理解と協力が私たち難民を支えてくれたことの証です。
決して私たち難民の力だけでは成しえることはできませんでした。
心より感謝しています。
また、こうして私たちの石鹸が日本の皆さんに愛されていることに生きがいを感じています。
これからも愛される石鹸であり続けるよう私たち石鹸職人たちも日々努力して参ります。

母国では、戦闘が続き弱い立場の市民が更に辛い立場に追いやられている現状はやり切れない思いです。
平和で民主的な国に生まれ変わる事を祈ります。

高品質な製品作りの為に
アレッポの石鹼職人の検査
日本のマーケットは、非常に厳しい製品基準を求められるため品質管理は大変重要な点です。
バラカート社の石鹸工場では原料に使われているオリーブオイルとローレルオイルは最高品質の物だけを使用しており、保存料・着色料・防腐剤・香料・金属封鎖剤等は一切無添加です。
原料であるオイルの品質検査、製造、保管の各工程での管理を徹底しており、安全で高品質の石鹸を製造しております。

写真:検査技師によって石鹸の原料となるオイルの色、香り、粘度、酸味、水分量、異物等をチェックします。

日本のクロスロードトレーディング社へ
クロスロードトレーディング02
出来上がった石鹸は自然乾燥期間を経て検品、包装され、これらの工程が全て終了したのち日本に向けて輸出されます。
トルコのガジアンテプにあるバラカート社の石鹸工場から近い港、メルシーン港から船で輸出され、マレーシアを経由し、約一か月の期間を経て日本に輸入されます。
輸入された後は当社で全ての石鹸の金属検査を行い、次に外部検査機関によって成分分析を行います。
その後当社のスタッフによって石鹸一つづつ検品を行い、最終的に全ての段階をクリアした商品のみが出荷されます。

安全で高品質な商品を安定してご提供できるように、当社ではこうした品質検査を徹底して行っています。


国際規格ISO 9001を取得
アレッポの石鹼職人IZO
バラカート社は2016年に国際規格ISO 9001を取得しています。

ISO 9001は品質マネジメントシステムに関する国際規格で一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上させるためのマネジメントシステムに関する国際規格です。

最も普及しているマネジメントシステム規格であり、全世界で170ヵ国以上、100万以上の組織が利用しています。
規程や手順、そしてこれらを実際に運用するための責任・権限の体系が、「マネジメントシステム」と呼ばれます。言い換えれば、マネジメントシステムとは、目標を達成するために組織を適切に指揮・管理する「仕組み」のことであるといえます。
「ISOマネジメントシステム規格」はこういった組織の「仕組み」に関する国際的な基準を示したものです。
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バラカートとクロスロードトレーディングの歩み

アレッポの石鹼職人クロスロード
私(ガザール)は実家のダマスカスに居た頃、日本の大使館や日本の企業などのコーディネートの仕事に就いていましたが、たくさんの事が学べる良い機会となりました。
もともとシリアと日本の市民レベルで交流のかけ橋になるような仕事をしたかったので、直接日本の方々と触れ合える仕事がしたいと考えていました。
また日本に住んでいた頃、シリアに関わる日本人学生やNGOの活動家からアレッポの石鹸は日本人に評判がいいと聞き、
特産品の少ないシリアにとってアレッポの石鹸が受け入れられている事はシリアの文化にも興味を持ってもらうチャンスではと考え、市民レベルでの交流につながると思いアレッポの石鹸を日本で販売する事から始めてみようと考えました。

1997年、取引先を決めるためスーク(市場)に売られているアレッポ石鹸を買い、品質の良い工場を選んでいきました。
幾つかのアレッポの石鹸工場に連絡を取り工場を見せてもらい、バラカート社に決めました。 また、地中海に程近いカサブにはカサブ石鹸のスティーブ工場があり、この2社と契約しました。
その時の写真(カメラが古くてすみません)左 ヤヒア・バラカート 中央 当社のガザール代表 右 ワリード・バラカート

アレッポの石鹼職人からJetro展示会
2000年、会社を札幌市に設立。自分の足で販売先を探して回り販路を地道に広げていきました。
2年後には少しずつ軌道に乗り始め、2002年に赤坂で行われたJETRO主催のシリア・ヨルダンの展示会への出店にお声掛け頂き、「アレッポの石鹸」と「カサブ石鹸」をシリアの特産品として紹介するという貴重な体験をしました。
その時の写真(カメラが古くてすみません)

アレッポの石鹼職人からエコープロダクト
また、同年にデパートや薬局、自然食品店の販売先が大きく増えたことから関東進出のため会社を千葉県に移転。

その後はアースガーデンやエコプロダクツ等のイベントへの参加。
写真は2004エコプロダクツの時の写真。

アレッポの石鹼職人から日経新聞
時には取材を受ける事もあり、少しずつではありましたが成長していきました。
記事は取材を受けた記事です。

2014年から当社と取引先のバラカート社、スティーブ氏にとって困難と激動の時期です。
アレッポ市が激しい攻撃をされ、多くの一般市民は犠牲となり、または難民となりアレッポから避難する市民達が増加していきました。日本でも毎日のようにアレッポの惨状が報道されるようになっていました。
現地との連絡が途絶えがちになり、石鹸の生産が出来なくなるのではないかとの心配から、バラカート社にできるだけの量の石鹸を作って欲しいと依頼、2015年には大量の石鹸を日本に輸入しました。その直後、石鹸工場近くにタル弾が落とされ工場に被害が出ました。この時すでにスティーブ氏は石鹸の製造を止め家族と共にアメリカに向け出国、避難。これを機にカサブ石鹸は千葉県の当社にて製造する事となりました。
そして、バラカート社の皆さんはアレッポの石鹸職人と一緒にトルコに避難し、難民となりました。
難民となったバラカートさんは家族が一緒に住める民家を借り、トルコでの生活を始めました。
アレッポでの惨状により希望を持てず石鹸の生産はもはや出来ない状態でした。
何か月も連絡が取れずにいたので連絡がきたときは安堵しました。そして日本のお客さんが石鹸を欲しがっている、この石鹸が無くなると困る人がたくさんいる、私もサポートするので頑張ってくれないかと伝えました。
日本では、激しいアレッポへの攻撃による惨状が毎日のように報道され、アレッポを心配する声や石鹸が日本から無くなるのではという声が聞かれるようになっていました。
そんな中、当社もNHK総合とBSから取材を受けました。
下記は報道された時の写真
アレッポの石鹼職人からNHK
アレッポの石鹼職人からNHK01

NHK BS 2016年に世界のトップニュースの取材を受けた時の写真。
アレッポの石鹼職人からNHK_BS1
アレッポの石鹼職人からNHK_BS102
アレッポの石鹼職人からNHK_BS103

アレッポ情勢が報道されることにより、リピーターのお客様だけでなく石鹸の事を知らなかった方々までもがアレッポの石鹸を買い求めるようになり、当社の1年分の在庫が約2週間で無くなる勢いでした。
しかし、バラカートさんがトルコに避難する前にありったけの石鹸を日本に出荷してくれた事が功を奏しました。
トルコに避難したバラカートさんは1年がかりで見つけた石鹸の廃工場を借り、試作品作りを始めたとの知らせは、石鹸がまた日本に入ってくるという喜びもありましたが、彼らが希望を持って前向きに動き出した事が家族の心配や悩みを持っていた私自身が勇気を貰いました。
石鹸の在庫はギリギリの状況でしたがトルコで製造したアレッポの石鹸第1号が何とか日本に届き、当社は欠品という事態を回避できました。

アレッポで生産していれば掛からなかった経費がこのような事態になった事でずいぶんと掛かりました。
トルコはアレッポよりも物価が高いうえに賃貸の工場では何をするにもトルコ語の通訳が必要なのでバラカートさんのストレスは計り知れません。
当社が出来る事はこの負担を当社が負う事で何とか石鹸を作り続けられるよう、またより多くの日本の皆さんに難民となってアレッポの石鹸を作り続けている職人達の事を知ってもらうためのサポートを続ける事でした。
そのためにも、品質を落とさない事、値上げをしない事、ネットでの販売に力を入れ幅広く認知してもらう努力を職人たち側と日本の当社側で行ってきました。

前にも書きましたが、私はシリアと日本の市民レベルで交流のかけ橋なるような仕事をしたいと思っています。
石鹸を売る事で単にモノとお金のやり取りだけではなく、シリアの石鹸職人の思いや今置かれている状況も伝えたい。また、日本で石鹸を使ってくれている皆さんの思いも石鹸職人に伝える事が出来ている事を嬉しく思います。

時折、心ないコメントを見つける度に悲しくなる事もあります。ですが、日本から遠く離れ今も困難に立ち向かっている難民達を思うと小さな悩みに過ぎません。これからもあきらめずに頑張ろうと思っています。
何よりアレッポの石鹸職人たちに感謝の気持ちでいっぱいです。そしてバラカートさんの商品を認めて下さった日本のお客様にも心より感謝しています。

有限会社クロスロードトレーディング
代表取締役 ガザール 勇